坂口安吾  amazon:白痴 (新潮文庫)

mayumomo2004-05-10



坂口安吾amazon:堕落論に続いての2冊目。
彼の代表作となっている短編小説で、
近年、この白痴をベースにして映画化がされた。


本家の白痴は第2次世界大戦時の最中の出来事を描いているが
それを世界の終わりにすりかえて映画では浅野忠信が主演している。


この本には白痴の他にも、6つの短編小説が描かれている。


キーワードは「戦争」。
そしてそれぞれの主人公は、戦火で焼き尽くされる町を
密かに望んでいる。とても自嘲的に。アウトローに。堕ちていく。


新聞記者であり映画の演出家である伊沢は
気違い(本文に沿った表現を述べているだけで差別的な意味はない)の
嫁である白痴の女と奇妙な同居生活を始める。


伊沢が布団を敷いても、女は押入に籠もってしまう。
女はまともな会話ができない。
伊沢は女の存在をだんだんもてあますようになる・・・・



現代の文化や経済観念ではもう失われた昭和の生活。
ノスタルジックというよりは、戦争とそれに抗うことの出来ない
淡々と生きる日本人、という影の部分を象徴するような内容です。



私は、この本の中にある
「戦争と一人の女」と「青鬼の褌を洗う女」がお気に入りです。
(前者には共感を覚え、後者には妾の主人公に高貴さを感じます)


坂口安吾が求める、理想的な女性。
天性の娼婦の姿がここにあります。(理想の女性!納得!)


男と女。肉体と精神。どうしようもない人間の本能。
堕落論」を読まなくても十分に堪能出来る作品です。


現代語訳(改訳)されているので、読みやすいと思いますよ。