林真理子 他 amazon:東京小説 (角川文庫)
表紙と表題に惹かれて買ってしまいました(嗚呼)。
5人の現代小説家が共同して“東京”についての小説を書いてます。
青山・銀座・下高井戸・深川・新宿の5つの短編集。
深川以外は一応私自身にとっても思い出のある土地柄なので
情景が浮かびやすくて、東京のスレた感じが哀愁として映るのですが
東京を知らない人が読むとどんな感じなんでしょうね?
ぜひ聞いてみたいです。
私個人の感想を言えば、
青山を舞台にした林真理子の「一年ののち」は、
(映画「東京マリーゴールド」の原作)
田舎から東京へ上京した来た人間が一度は味わう劣等感を
見事に、けれども毒々しくも浮き彫りにしていて、
読んでいるこちらも胸が痛む思いをしてしまう。
東京という華やかな、そしてドライな都会に憧れる。
けれども東京で生まれ育った人間とは根本的に自分は違う気がする。
5年経てば、そんな思いからも脱出できるというが。
何か狂わされている気がする。そんな気がします。
椎名誠の銀座を舞台にした「屋上の黄色いテント」はこの本で最も
好きな小説。
もともと椎名誠の背理法を使った人物描写は好きで
人を不快感にしないから余計に“ただ普通に読みたくなる”。
村上春樹のエロチシズムを削いでユーモア注いだ感じ。
ともかく子犬がいいです、子犬(結局、犬かよ 笑)。
藤野千代の「主婦と交番」も母親になりきれない母と子が
ピーポ君を巡って起こす騒動がヘンテコで、ほのぼのする。
最後の盛田隆二「新宿の果実」では新宿歌舞伎町の日々が綴られる。
歌舞伎町のイメージにぴったりくる内容です。
純愛と愛を売る裏腹な世界。
少年と少女の逃げ場のない切なさが胸に染みます。
余談ですが。
最近久しぶりに東京へ行くと、騒音と悪臭と空気の汚さに驚く。
住んでいた頃は、何も感じなかったのに。