安藤治 amazon:心理療法としての仏教 法蔵館

mayumomo2004-09-06



1ヶ月ほどかけてこの本を読んでいました。
先日も言いましたように私、仏教に関して大変浅学なので(他分野においても同じですが)
突っ込まれると非常に辛いので私の感じるままの感想を述べます。



この本の内容が目指す処は“宗教としての仏教”を超えた仏教への先導。


つまり、主題にあるように仏教を心理学の一派として捉えよう!という動きを紹介しています。


その為、仏教哲学といった理知的で専門的な論点には立たず
あくまでも既存の心理学(特に精神分析)との対比を論じ
心理学の一分野として仏教の根を張ろう!と筆者は述べています。


そしてそれが可能なことであり、合理主義で発展した現代には必要であると主張。


例えば、自我の問題。
西洋心理学(精神分析アメリカで発展した心理学を混同するのは安易ですが)と
東洋心理学(仏教で説かれてきた真理)の捉え方の違いは大きい。


西洋心理学では自我機能が他の機能をコントロールすることが望ましいとされ
その理論に基づいた心理療法が発展したが、
仏教では自我とは実体のないものであり、自我とは無我である認知が人間には望ましいとされている。
(宗派には多少の違いがあると思われるが・・・・)


個の超越、という奴です。
手っ取り早く言えばトランスパーソナルです。


私が「自分には向かない」とさんざん評価を下してきたトランスパーソナル心理学です。



更に心理学は精神という目に見えないものを扱いますが、科学でなければなりません。
またその治療法は理論と根拠、そして実証データに基づかなければいけません。


仏教における瞑想(最近私がよく言うメディテーションです)は
自己への気づきや自己成長への有効な一手だと近年、実証され始めているそうです。


瞑想、というと座禅を組んで、何も考えてはならないものだと私は思ってましたけど
目指すものは全然違ってました(笑)


静寂の中でゆっくりと体の中を流れる感覚を“ただ眺める”んだそうです。
意識に上ってくるものに囚われず、それが流れ、過ぎ去るのをただ眺めるのだそうです。


そうすることで煩悩(執着)から離れ、見えなくなっている本来の自分のリズムを掴む。
セルフアウェアネスが得られ、自動思考から解放される。


これが瞑想なんだそうです。


導入方法や背景理論は異なりますが、内容はフォーカシングにとても近い。
さらに瞑想がはらむ危険事項はベーシック・エンカウンター・グループとほぼ一緒。
(精神病理を引き起こす可能性、現実への回帰が難しいetc・・・)


瞑想をもっと日常に近い形で行えるようになれば
私自身の自我確立に重要な役割を果たすのではないか?と思っている処です。
しかし実際、やってみないとダメですね。


仏教理論、心理学との理論対比、心理療法としての瞑想、その危険性と予想される限界。
著者の安藤氏は考えられる限りの範疇でこれらを述べています。



仏教になじみの薄かった私でもなんとか読むことが出来ました。
逆にこの本、心理学をかじってないと読めない部分が多いかもしれません。



言葉の力に頼りすぎる心理学。
私は今、言葉になる以前の感覚の方を大事にしたいと思っています。


しかし、確かに日本ではまだこの仏教を宗教と切り離し
心理学として迎え入れようという体勢は出来ていないように感じます(文献からして)。


故にこの本が述べていることはまだ私を動かす正規の原動力にはならない。
精神分析との対比しかされていない部分も含め、現代心理学の中で仏教を活かすにはまだ弱い。
でも私のエンジンをかけるベースにはなるかもしれない。


なのでここを始点にして動き始めることにしました。
この辺りの理論を自分の傍らに添えてこれからやっていくのかどうかを確かめるためにも。



去年書いた大学院のための研究計画書を今の私は完全に通り過ぎてしまった。
それだけ心理学を学ぶ者としてだけではなく人間として成長したのかもしれませんが。


まさか去年の自分は想像もしていませんでした。
苦手だったユングやトラパに関わっていくだなんて。


私はロジャースっ子だったんですけどね(笑)
根っこは未だそこにありますが、人間、落ちる所まで落ち、命に関わると変わるみたいです。


個人的な話に脱線しましたが。
仏教における宗教性がそれほど強くないので
今後の心理学界を考えるために余裕のある人はこの本を読んでみてもいいと思います。


仏教界にも心理学界にもこの本は風穴的な著書なのかもしれません。
2003年初版発行ですしね。


でもこの方向性、私をインドへ導いているのがなんとも面白い。


やはり、縁があるのかもしれない。
ふふふ。俄然やる気。インディオ目指して英語勉強しよーっと。(あれ?受験英語は・・・?笑)