中島義道 amazon:不幸論 (PHP新書)
幸福論についての著書は、さまざまな作者が綴っている。
しかし不幸論について書かれた本はあまりない。
この本は、私が絶望のどん底(今もそう変わりはないが)初期
に読んだもの。
中島義道は人生に幸せなど存在しないという。
幸せというのは常に“まやかし”であって幻想にすぎないという。
オビにも「幸福とはしょせん錯覚」とデカデカ書いてますし。
日本人はとりわけそうした“まやかし”に薄々感づきながらも
偽りの幸福を求めて、死という絶対的な不幸の到来まで生き続ける。
この本は、そこにメスをグサリと差し込んだような先鋭な哲学書です。
幸せについての定義を再度捉え直し、その不完全さを突く。
新書だけあって、哲学者の著書にしては読みやすいし
手に取りやすい一冊です。
読んでいた時期が悪かったと言えばそれまでなんですが
内容は私の絶望感を煽りました。
生きるの本気で辞めたくなりました(汗)。
死にかけの魚のように泡吹きました(笑)。
ここまで救われない本もないかもしれない。
中島氏も誰かを救う気なんてさらさら無いと思いますが。
文中、こんな中島夫婦のやりとりが書かれている。
−あなた、Y(息子)がまだ帰ってこないの。
−殺されたかもしれないなぁ。
−そうね。そういう可能性もあるわね。
(相対的不幸の諸相より)
私は、この箇所がとても好きだ。
ここまで「捨てる」覚悟が出来る男性と私も一緒になりたいと思う。