谷崎潤一郎 amazon:猫と庄造と二人のおんな (新潮文庫)

mayumomo2004-05-26



久しぶりに谷崎潤一郎の本を読みました。
以前に読んだのがamazon:春琴抄で大学3年の頃だったと思います。
(精神医学系授業のレポートの課題だったのです。今思うと・・・)


谷崎文学は男性作家の割に恋愛・純恋愛が中心で
男女の愛の極みを描こうとする姿勢が強く感じられます。


さらに美しい日本語にこだわって描かれているので
読者側としても余計な心配や懸念をせずにいられるのが良いです。


私は割合、谷崎潤一郎の著書は好きです。
50年以上も前に書かれた本にもかかわらず
現代でもすんなり読めて、さくさくっと身に染みいる。
実際これは一日もあれば十分に堪能しつつ読み切れてしまう作品です。


この本は、タイトルの通り首尾一貫して
ある一匹の猫と庄造なる男と別れた妻、現在の妻の愛憎劇を描いています。

そしてタイトルの順通りに猫が最も中心的な存在で、猫が人を支配するのです。


庄造という優男は、男気もなく母親のおりんと現在の妻福子の言われるがままに従う。
そんな庄造が妻よりも母よりも愛するもの、それが猫のリリー。


リリーはやがて元夫への未練を引きずる品子の所へ連れて行かれる。
リリーを巡って人間の感情のもろさや愛情の皮肉さが浮き彫りになって・・・・


リリーというのは「LILY」と書いて「百合の花」を指すんだそうです。
百合の花は純粋性という花言葉があるらしく、いかにもこの本全体が
リリーの純粋性によってまとまっている感じがします。


谷崎は男女の仲が支配−従属によってでしか幸福にたどり着けないのだ
とそう述べているのだそうです。


果たしてそうなのでしょうか。
私は、そのような幸せは幸せという名の幻想にすぎないと思うのです。
またそこに谷崎自身の男女間の愛情へのあきらめが見て取れるとも言えるのですが。


今度はamazon:痴人の愛]と[amazon:刺青を読んでみようと思います。