書評2


[小説]村上春樹 「アフターダーク」 講談社


読了してから随分と時間が経過しましたが、未だに納得の出来ない一冊(笑)


村上春樹はどうしてこんな風に小説を書いたのか。
どこに辿り着きたかったのか。
未だに私は腑に落ちません、全然。


始まりは午後11時56分。終わりは午前6時52分。


この一晩を第3者の人格目線で“見る”小説です。その第3者の中には“私”も含まれている。
私も展開されていく物語の現場を‘ただ見ている’出演者となる。


最初から最後まで何の手出しの出来ない、何も出来ない傍観者の役割を読者は負わされる。


それが一つの大きな「アフターダーク」の特徴だと思います。


たぶん、これまでの春樹ワールドを想定していた読者(私も含む)は
「えっ?!なになになに???」と思っているうちに物語が完結してしまったんじゃないかと思います。


これまでの春樹ワールドは「僕」が中心になって世界が「僕」とは脈絡のないところで動いていったし
圧倒的であがらうことの出来ない受動感を読者は味わっていたはず。


それが今回は全くありません。主人公はいないのです。あえて言うなら小説内には登場しない第3者としての“私”が主人公。



もう一つの特徴はバラバラな世界観。

2つの点(世界aとb)が交わらない物語。直線にならないので
最後まで点(世界a)は点(世界a)のまま。点(世界b)は点(世界b)のままなのです。


頭としっぽのないサンマみたいな小説です。
蓋と底のない段ボールみたいな物語です。


へんな書評になりつつありますが(笑)私が腑に落ちていないので仕方ないです。


この感想を以て興味がわいた方がいたら(いなそう)是非誰かに借りてください。なんなら貸します。声かけて(笑)


あまりのスッキリしなさに憤慨する方が出ているんじゃないかと思います。
なので購入はお気に召してからで。



私は初期と中期の春樹作品が好きです。
ちょっとエロいですけど(アフターダークはほとんどエロスなしです)。